入り口には二体のお地蔵様。目をつぶり手をあわせていると…
「ゴポゴポゴポッ!」と勢いよく湯がはき出される音。目の前のバラック小屋の中に浴槽があるのね!(贅沢でごまかさない、湯質勝負の感じ、期待大です)。
戸をあけて中に入ると、小さな番頭。壁に貼られた効能表には、見たことのないほど、数多くの適応症の内容が書かれてありました。
「お客さまは近所の方が多いのですか?」と、番頭のお姉さんに尋ねると、「いえ、病に悩まれる方々が遠方から通って来られるよ。近所の人はそんなに利用しないかな」と教えてくれました。ちょうど男性風呂の方に来ているお客さんも、今週3度目だとか。
ではさっそく私も。600円を支払う。細い通路に作られた脱衣所で服を脱ぐ。
中に入ると石で組まれた小さめの浴槽がお目見えです。
外から太めのパイプが引かれ、先から温泉がゴポゴポ投入されています。湯治を売っているわけですから、もちろん源泉かけ流し。絶えず浴槽からはあふれています。
特筆したいのは、なんといっても熱さ!一切加水なし、あふれた温泉が足元に流れるわけですが、もうそれが熱いのなんのって、これはもう立ってられない!
湯に指先をちょんと入れてみる、ああ、激アツ!今までの中でも1位2位を争うレベルです(湯河原温泉のままねの湯、大分別府温泉の薬師湯レベル、いやその上か?)。
入り口には、水の入ったポリタンクが置いてあり、「熱かったら入れてね」と言われましたが、それで間に合うようなレベルでは全くなく、気休めにもならないことがわかるので、ポリタンクを持つ気にもなれません(苦笑。
しかし、ここで「入れませんでした」は、私の辞書にはありません。意を決して、流れるように体を元湯に沈めました(途中で止まったら最後、出ちゃうから、もうここは一気に!)。
動けない、動かない、じっと体を湯に預ける、というより、湯に耐える。全身がじんじんしてくる。
入浴療法には5分から10分とありますが、うん、初心者には無理(苦笑。
20秒数えて、浴槽の外に避難。見てください、この足。真っ赤です。
飲泉も可能な食塩泉・単純温泉。無色透明で、ほんのり塩気がありますが、それ以上に複雑な苦味を感じます。
床にも源泉が絶えず流れているので、浴室の端の方に避難していると、となり男性浴室の方から、泡の入った湯が流れてきました!おおっとなるほど、女性用浴室に排水溝がまとめられているわけね、逃げ場がなくなったぜ!
せっかく来たんだからと、もう一度、湯に浸かり、目をつぶり、子供のように数を数えて、熱々の体で脱衣所へと上がりました。窓から夏の風が、こんなに気持ちがいいなんて。
湯上りに、番頭さんに「元湯は源泉だから、浴槽に入るお湯も49度くらいですか?」と尋ねたら、「パイプを通ってくるから、湯口のところでは、48.5度かな」と答えてくれました。
0.5度の差もあやふやにしない。真摯に源泉と向き合い続けるからこそ、効能高く、多くの湯治客が後を絶たないのだろうと思いました。